がん幹細胞を迅速に誘導するゲル
がんの再発原因となるがん幹細胞を迅速に作製し、がん研究を発展させる
概要
がんの再発率は平均して約20%であり、進行の早いがんでは5年以内の再発率が70%近いとも言われている。再発の原因として、放射線や薬剤に耐性を示すがん幹細胞の存在が指摘されている。近年、がん幹細胞をターゲットとした創薬研究に注目が集まるが、がん組織中にがん幹細胞は極めて少数しか含まれておらず、研究を困難としている。また、がん細胞からがん幹細胞を誘導する方法が複数提案されているが、いずれも培養コストや誘導時間がかかり、臨床応用できるものではない。
本発明は、がん細胞をダブルネットワークハイドロゲル(DNゲル)の上で培養することで、薬剤使用や遺伝子操作を行うことなく24時間でがん幹細胞を誘導する方法に関する。本方法で誘導されたがん幹細胞は、幹細胞マーカー遺伝子発現量が増加しており、かつマウスに注入されると少数でも腫瘍形成能を有する。
本方法によりがん幹細胞が簡便に作製可能となることで、再発や転移が起こらない根本治療を可能にするがん治療薬の開発促進が期待される。
DNゲルにより誘導されたがん幹細胞の特徴

応用例
■がん幹細胞を誘導する足場材
・がん幹細胞を標的とした新規治療薬の開発
・個別化医療(患者個々人のがん再発機構の予測)
関連文献
[1] Suzuka, J. et al., Nat. Biomed. Eng. 5, 914–925 (2021).
https://www.nature.com/articles/s41551-021-00692-2
[2] JST新技術説明会 2022年1月18日発表「ハイドロゲルによるがん幹細胞の迅速誘導法の開発」
https://www.shingi.jst.go.jp/list/list_2021/2021_shika.html
知的財産データ
知財関連番号 : 特許第7115749号、11834671(US)
発明者 : 田中 伸哉、安田 和則、グン 剣萍、津田 真寿美、黒川 孝幸
技術キーワード: がん幹細胞、 癌幹細胞、 リプログラミング、 がん治療薬