低融点合金ロウ材
ナノ粒子の融点降下現象を用いて、1000℃未満で融解する貴金属修復用のロウ材
概要
貴金属宝飾品に生じたキズ・割れを修復する方法として、合金から成るロウ材をキズ・割れ部に載置し、ロウを熱融解する方法が用いられている。貴金属はその合金組成により多様な色味を示すため、ロウ材には貴金属地金と似た合金組成を持つものを使用して、色味が変わらないように修復する必要がある。現状の修復方法は、合金ロウを融解するために1300~2500℃のバーナーを用いて手作業で行う必要があるため、
宝石等への熱ダメージや、熟練職人の減少などの問題点が指摘されている。
本発明は、低温で熟練を要しない融解が可能な、貴金属の低温修復方法とそのロウ材に関するものである。本ロウ材は、粒径1桁nmの合金ナノ粒子を主成分としているため、金属ナノ粒子の融点降下現象により、
1000℃超のバーナーを使わずに融解できることが最大の特徴である。ナノ粒子の合成には、レーザー誘起核生成法という独自の手法を用いている。
この手法は、レーザー照射により任意組成の固溶合金ナノ粒子(平均粒径10nm以下)を合成できるため、貴金属地金と同組成のロウ材を作成でき、修復前後で一切色味が変わらない。右記は、一粒子内に銅
(赤色点)・パラジウム(青色点)・金(緑色点)が均一分布した固溶合金ナノ粒子を主成分とするロウ材のSEM画像である。粒径が10nm以下であるため、実際に500℃を大きく下回る温度で融解していることが分かる。
ロウ材のSEM画像とDSCによる融点計測結果
応用例
・特に文化財やアンティーク等の、いわゆる一点物の貴金属を対象とした修復用ロウ材
・上記の貴金属修復受託サービス
知的財産データ
知財関連番号 : 特開2023-055155
発明者 : 中川 勝、中村 貴宏、早川 俊昭
技術キーワード: 材料