認知機能を改善するPPARα作動薬
統合失調症などの精神疾患への新規創薬シーズ
概要
統合失調症の病態メカニズムについては、近年の大規模ゲノム解析や死後脳解析によって、シナプス形成不全が関わる可能性が指摘されているが、詳しいメカニズムについては不明な点が多い。また、統合失調症の治療薬として、ドーパミンD2 受容体遮断作用を主とする薬物が用いられているが、対症療法が中心であり、陰性症状や認知機能障害などに対する効果は不十分である。
そのため、新しい分子メカニズムに基づく新規治療薬の開発が望まれている。
発明者らはこれまで、核内受容体のPPARαをコードするPPARA遺伝子の機能低下が、統合失調症の病態形成にかかわることを発見した[1]。PPAR𝛼はリガンドによって活性化できる転写因子であることから、PPARAの活性化が統合失調症改善につながる可能性を考え、実際にPPARaアゴニストである fenofibrate がシナプス機能改善に効果があることを見出した[2]。
今回、PPARaアゴニストである pemafibrate が スパイン密度を回復させるのと同時に、認知機能の向上に役立つことを、マウスを用いた実験により、新たに発見した。
本発明は統合失調症に対する新規メカニズムの創薬に繋がる可能性がある。さらに、スパイン密度の減少及び認知機能の低下は、アルツハイマーをはじめとする他の精神疾患でも同様にみられる症状であるため、これらの疾患の治療薬にもなり得る。
マウスのスパイン密度評価試験
マウスの認知機能評価試験
Novel object recognition test:
マウスの認知機能を調べる試験
統合失調症モデル動物では新奇物体に近づく時間が減る (認知機能低下)
応用例
・統合失調症治療薬
・アルツハイマー型認知症治療薬
・その他精神疾患治療薬
関連文献
[1] Maekawa M, et al. Transl Psychiatry. 2017; 7:e1229.
[2] Wada Y, et al. EBioMedicine, 2020; 62:103130.
知的財産データ
知財関連番号 : PCT/JP2023/023819
発明者 : 前川 素子、大和田 祐二
技術キーワード: 統合失調症、アルツハイマー